ゴーストハウス!

ゴーストハウス!



イラスト1



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シナリオチャート


ゴーストハウス

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【1】少年
・祖母が幽霊屋敷を購入した。
・大人しくあまりクラスに馴染めていない。
【2】幽霊の少年
・いたずら好きの少年。
・生身の人間に長期間触れておらず、怪我をする・痛い、などの生身の人間の感覚が分からない。
【ほか】
・おばあちゃん
幽霊屋敷を買った。おじいさんに会えると思ったから。週末に一人ですこしずつ家の修繕と手入れをしに来ている。庭づくりが上手。
【幽霊】
(幽霊)ハウスメイド
・幽霊の青年を心配して住み着いている。恋人を待っている。
(幽霊)大男
・給仕全般に長けており、居心地がよく住み着いている。家族を残して自分が死んだ未練で成仏しておらず、幽霊少年が心配で住み着いている。

【序章】
◆◇
-1-
幽霊屋敷を購入した祖母を心配した少年は、ときおり屋敷を訪ねていた。
祖母は週末そこで過ごし、家を少しずつ手入れしているので、少年はそれを手伝っている。
少年には力仕事とはもう一つ、心配事があった。幽霊のことだ。

-2-
停電のためブレーカーを探していた少年は、幽霊の少年と出会う。
ひどくイタズラ好きで、時おり良識に欠け、幽霊の性質のためか、
生身の人間が怪我をすることに対して行き過ぎたいたずらをすることがあった。
祖母の住環境にが危ないと感じた少年は、幽霊から祖母を守るため、
幽霊たちと話し合いをすることに。

そう、そこは本物の幽霊屋敷だったのだ。
直ちに害をなす様にも見えないが、この家には祖母がいる。
放っておくわけにもいかない。
幽霊と話し合えば、彼らを味方につけ、
祖母を安全圏に留めておくことができると判断した少年は、
屋敷に通い幽霊たちと交流を試みる。
少年と幽霊たちとの物語が始まる。

【本編】
◆◇
<あらすじ>
祖母が不在時、級友がやってくる。
級友たちは幽霊屋敷に不法侵入し、秘密の部屋へと誘われ出られなくなってしまう。
少年は助けるため秘密の部屋に向かうが…。
<終盤>
助けた友人たちと仲良くなり、月曜日からの学生活がすこし楽しみになる少年。
幽霊の少年がむくれていることに気づく。
外に友人ができたことを寂しく思う幽霊少年。
その背中に少年は言葉をかける。
この街へ来て初めて出来た友人は君だと。

【終局】
-1-
祖母は少年に、幽霊屋敷を買った経緯を話す。
夢で死んだ夫が若い姿で探し物をしているが、見つからない。
仕立ての良いシャツを腕まくりして、
線の美しいモスグリーンのスラックスを、サスペンダーで吊っていたという。
祖母も若い頃の姿で手伝うが、探しきれなかったという。
その探し物をしていた場所が、この幽霊屋敷であった。
祖母は、幽霊屋敷が死んだ夫の幼少期の生家だったことを打ち明ける。
片付けの中途半端な部屋を掃除しながら、祖父の記憶を辿る少年と幽霊少年。
クローゼットを開けたとき、タイムスリップしてしまう。

-2-
少年は、クローゼットの中で目を覚ます。
一緒に入った幽霊少年はおらず、一人だ。
木製クローゼットのシェード越しに、兄弟の声が聞こえた。
仲睦まじげに戯れあい、外へ出ていく。
兄弟の弟のほうには、姿にも声にも見覚えがあった。
やや幼くはあったが、少年の友人である幽霊少年だ。
少年がクローゼットから出ていき辺りを見渡すと、
祖母の購入した幽霊屋敷をそのまま新しくしたような造りで、
しかし家具はかなり古い時代のもので、
それらが錆びることも褪せることもなく飾ってある。
小説で読んだタイムスリップが脳裏をよぎったとき、
ふと誰かが駆けて戻ってくる音がした。
少年は隠れようとしたが間に合わず、
幽霊少年(の小さい頃)に見つかってしまう。
幽霊少年(の小さい頃)は少年を知らない様子で声をかける。
慌てて大声を止めさせる少年。
困った様子の少年を、幽霊少年は無害と思ったのか、親しく接した。
明日からサマーキャンプへと出かけるのだという。

<中略>

-3-
幽霊少年は、少年の祖父の弟だった。
小さい頃に亡くなり、死してなお迷子になってしまったと。
少年は、幽霊少年(の小さい頃)以外に見えていないらしい。
その時代の人間から、見ることも、触れることもできない。
ただひとり、幽霊少年(の小さい頃)を除いて。
それを良いことに、幽霊少年から家の中で暮らすことを提案される。
幽霊少年の兄(少年の祖父)にも紹介されるが、
付き合いで見えるふりをされるだけで、対話することはできない。
祖父(の幼少期)の独り言を、少年は聞き漏らさなかった。
「昔からそうなんだ。
 弟は、ありもしないことを楽しそうに話すんだけど、
 それがときどき叶っちゃうみたい。」

-4-
幽霊少年(の小さい頃)は、サマーキャンプへ出かけた。
少年が家で待つなか、祖母の幽霊屋敷の間取りをもとに、
元の世界へ帰る帰り道を見つけることができた。
幽霊少年(の小さい頃)が帰ってきてから、別れを告げて、もとの世界に戻ろう。
そう考えた少年は、最も落ち着くクローゼットのなかで眠って待つ。
帰ってきたのは幽霊少年(幼少期)ではなく、死を悼む家族だった。
少年は、彼らの話から幽霊少年が亡くなったことを知る。
呆然とする少年の背後から、声がした。
「僕、死んじゃったの?」

-5-
青白く血の気が引いている。川に落ちたのか、水に濡れている。
「僕、死んじゃったの?」
幽霊少年に問われて少年は答えることができない。
帰る方法が分からない少年と、途方に暮れる幽霊少年。
庭へ出ると、陽が落ちかけている。
ピンクと黄色の間みたいな、奇妙で禍々しいような、偽物みたいな色をした空だ。
自分が死んで孤独であるはずの幽霊少年(の小さい頃)は、
少年の帰り路を心配していた。
少年は幽霊少年に、帰り路はあるのだと告げる。
安心した様子の幽霊少年だが、
少年は、ひとりぼっちになる幽霊少年を置いていくことができない。
ふと振り返ると、家が「幽霊屋敷」に近くぼろぼろになっている。
夢から醒めかけているのではないか、と幽霊少年(の小さい頃)は言った。
その面影には、少年の知る、意地悪っぽい表情の幽霊少年の面影があった。

<中略>

-4-
「きみには帰る場所があるんでしょ。なら帰らないと」
幽霊少年の言葉に、少年は戸惑う。
この家に彼を一人きりにするのか。
自分がもとの時間に返ったらどうなる?
また会えるのか?
なぜだかむしょうに、もう会えないような気がして、立ち去ることができなかった。
帰り路が崩れかかる。
ふたりの後ろから、声がした。
「おまえ、ここにいたのか。やっと見つけた」

-5-
祖父だった。
祖母が言っていた夢のなかの姿によく似ていた。
仕立ての良いシャツを腕まくりして、
線の美しいモスグリーンのスラックスを、サスペンダーで吊っていた。
まさにいま、ついさっき迷子になった弟を探しにきた、という様子で。
死んでしまった事実などないように、祖父は幽霊少年にそれは自然に手を伸ばした。
戸惑いながらも幽霊少年は、兄の手を取った。
兄弟は、
少年のことが見えていないように、楽しげに家へと駆けていく。
自分を気にかけない二人を、少年は呆然と見つめていた。
幽霊少年に、もう見えていないのだろうか?
そうだ、幽霊少年に、少年は触れられるはずだ。
ふと幽霊少年に手を伸ばすと、すり抜けてしまう。
少年のことなど忘れてしまったように、
最初から見えてなどいないように、
幽霊少年は少年の傍をすり抜けていく。
幽霊少年の駆けた風が、少年の頬に当たり、前髪をゆらした。
自分の役目が終わった様な気がする、と少年は思った。
家へと帰る兄弟の背中を温かい気持ちで見守っていた。
彼らが玄関のドアを開け、家へ入る直前に、幽霊少年はふと立ち止まる。
少年はその様子を心配そうに見ている。もう帰るだけだ、帰らないのか?
幽霊少年は、何かをふらふらと探すように視線を彷徨わせ、
少年の方を見つめたとき、ふとまっすぐに彼の瞳を見つめて、笑った。
それから少年と幽霊少年は、笑い合って手を振った。明日も会う友人のように。
どうした、誰かいるの?と兄に声をかけられて、
明るい会話が弾ませながら、扉が閉まる。
玄関から漏れていた光が閉じられる。
気がつくと少年の頬は涙で濡れていた。

-6-
勝手は分からないが、少年は彼らの入ったのと同じ玄関の扉を開けた。
中は暗いはずだったけれど、閉じた扉の背後、外から、穏やかな陽の光がさしている。
埃がきらきらと舞い、去年できた公園から子供の遊ぶ声がした。
どうやら、帰って来れたらしい、と安心したとき、どっと疲れが押し寄せて、
くたくたで疲れていて、綿たっぷりつまったクッションに身を埋めていると、
祖母がお茶を淹れてくれた。
お湯を沸かす音、ポットからお茶が注がれる音、陶器の音のすべてが少年を夢ごこちに誘うなか、
祖母が独り言のようにぽつぽつと話し始める。
あら、疲れたのね。
わたしも今日はちょっと、お天気が心地が良かったから、お昼寝してしまってね。
夢心地に少年は、うん、と返事をしていた。眠りの淵で、少年は続きを聞いている。
あのね、おじいさんね、探し物が見つかったみたいだったの。


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